- PERは、株価の割安・割高の目安になる指標
- PERの平均水準は、15倍前後
- PERは、実績PERではなく、予想PERを見る!
- 2年~3年後のPERで割安・割高を判断しなければならない!
- PERを使った投資戦略は、業績の安定した割安株への投資がメイン
PERは、株価の割安・割高の目安になる指標
PERとは
PER = 株価 / 1株あたりの利益
(1株あたりの利益 = 当期純利益 / 発行済株式数)
で示される指標のことを言います。読み方は「ピー・イー・アール」です。「Price Earnings Ratio」の略称で、直訳すると「株価収益率」です。10倍、20倍、というように「倍」という単位で示されます。
これだけでは「何を意味する指標なのか?」さっぱりわかりませんが、会社の収益力から見て株価の割安・割高を計る指標として、PERは大きな役割を果たすのです。
PERは、「株価 / 1株あたりの利益」ですが、言い換えると「何年で投資した資金が回収できるのか?」を意味します。
株を購入するときに
- 株価 = 投資家が投資する資金
- 1株あたりの利益 = 投資家が投資した資金で生み出された利益
を意味します。
株価1,000円の株を100株購入した場合に使う投資資金は、10万円です。1年間で生み出される1株あたりの利益が100円であれば、100株で1万円の利益を生み出すことになります。投資資金10万円を回収するためには、10年かかる計算になるのです。
PER = 株価 / 1株あたりの利益 = 投資した資金を何年で回収できるのか?
を意味する指標となるのです。
- PER:5倍の株 → 投資資金を5年で回収できる株 → 割安
- PER:10倍の株 → 投資資金を10年で回収できる株 → 割安
- PER:20倍の株 → 投資資金を20年で回収できる株 → 割高
- PER:50倍の株 → 投資資金を50年で回収できる株 → 割高
言い換えると
- PER:5倍の株 → 1,000円で株を買った場合に、1年で200円の利益を出す株 → 割安
- PER:10倍の株 → 1,000円で株を買った場合に、1年で100円の利益を出す株 → 割安
- PER:20倍の株 → 1,000円で株を買った場合に、1年で50円の利益を出す株 → 割高
- PER:50倍の株 → 1,000円で株を買った場合に、1年で20円の利益を出す株 → 割高
というようなイメージとなるのです。
誰がどう見ても、PER:5倍の株の方が「良い株」ということがわかるのではないでしょうか。
投資家にとっては、投資した資金が早く回収できればできるほど「良い投資」となるのですから、PERの倍率は低ければ低いほど割安な株と判断できるのです。
PERの平均水準は何倍なの?
PERと日経平均の推移
上記を見ればわかりますが、2013年にPER(予想PER)は、約23倍まで伸びましたが、その後は14倍~16倍の間を推移しています。
つまり、PERの平均値というのは「15倍」が目安になるということです。
- PERが15倍よりも低い株 → 割安な株
- PERが15倍よりも高い株 → 割高な株
ということが言えます。
ゃあ、PERが15倍よりも、安い株を買えば、そのうち、PERが15倍になって儲けがでるっていうことでいいの?
そういう投資方法もあるけど、そんなに簡単ではないの。
いろいろな基準でPERの倍率は変わってくるわ。
投資家の期待値によってPERは変動する
企業が画期的な商品やサービスを持っていたり、今後の事業提携などで「株価が上がりそうな材料」がある場合には、投資家は、PERが割高でも、どんどん買い増しをして、よりPERが割高になる傾向があります。
- 「多少高くても、もっと株が上がりそうだから、買おう」
という判断です。
投資家の期待が大きい株は、PERが割高になりやすい
ということを意味しています。
例えば
「マンガ配信」を手掛けるLink-U (4446)のPERは
Link-U (4446)
PER 294.21倍
と平均の15倍の何十倍ものPERになっています。
コロナ禍でよりマンガの配信事業が伸びており、注目を集める有望な企業な分、PERが相場の何倍もの割高な価格設定となっています。
当然、逆パターンもあります。
- 「多少割安でも、もう株は上がらなそうだから、買うのは辞めよう」
という判断です。
投資家の期待が小さい株は、PERが割安になりやすい
ということを意味しています。
将来性が見込めない千葉の地方銀行である「千葉興業銀行」の場合は千葉興業銀行 (8337)
PER 2.68倍
と、相場の15倍よりも、かなり低い数値になっています。
これだけ、PERが株価の割安を示していても、買い手がいないという現状なのです。
このように「投資家の期待値」によって、株価の割安・割高の判断指標である「PER」は変動するということなのです。
単純に「PERが平均の15倍以下だから買おう」という判断をしても、思った以上に株価が上がらない事態に陥ってしまうのは、これが理由です。「割安だから買い」というわけではないのです。
業界によってPERは変動する
PERは、業界によっても、かなり変動があります。
市場の成長性が期待できる「ネット関連」「サービス業」、一部の「製造小売業」は、PERも高く設定されていることがわかります。
一方で、市場の成長性が乏しい「製造業」「金融業」「資源関連」の株は、PERが低めに設定されています。
- 将来性の高い業界の企業の株 → PERが高くなりやすい
- 将来性の乏しい業界の企業の株 → PERが低くなりやすい
という傾向にあるのです。
PERの割安・割高を判断するには、日本の株式全体の相場であるPER:15倍を基準とするのではなく、業界の相場のPERを基準として「高いのか?安いのか?」を判断しなければならないということです。
PER:25倍の株は、日本の株全体の相場PER:15倍から見れば割高の株となりますが、その企業の業界平均のPERが30倍だとしたら、割安な株となるのです。
成長余地によってPERは変動する
大企業ほど、PERは低めになる傾向があります。
ソフトバンクグループ (9984)
PER 8.45倍
大企業ほど、「これ以上成長する余地が少ない」「株価が上がったとしても、10倍、20倍にはならない」という傾向が強く、なかなか割安な株だから買おうという動機がうまれないのです。
結果的に
- 大企業の株ほど、PERは低めの水準
- 中堅、ベンチャー企業の株ほど、PERは高めの水準
となるのです。
「大企業なのにPERが割安だ。」と食いついて、株を買ってはいけないということです。そもそも、大企業は、PERが低いものです。
PERは、実績PERではなく、予想PERを見る!
PERは
- 実績PER
- 予想PER
という2種類のPERがあります。
- 実績PER = 実績の当期純利益(税引き後利益)を基に計算されたPER
- 予想PER = 業績の今期予想の当期純利益(税引き後利益)を基に計算されたPER
という違いがあります。
株式投資で重視すべきなのは「予想PER」です。
株式投資というのは、将来の株価の上昇を期待して購入するものです。過去の業績よりも、今期の予想の業績の方が重要度は高く、PERを判断するときも、実績から算出した「実績PER」ではなく、今期予想から算出した「予想PER」を基に、割安・割高を判断しなければならないのです。
注意しなければならないのは
多くのウェブサイトで「PER」が掲載されていますが、それが「実績PER」であったり、「PER」としか記載されておらず、「実績PER」「予想PER」のどちらなのか全くわからないケースも多い点です。良い銘柄選びで「PER」をチェックしたいのであれば、必ず「予想PER」が掲載されている書籍やウェブサイトをチェックする必要があります。2年~3年後のPERで割安・割高を判断しなければならない!
前述したようにPERを見るときは、今期の予想業績から算出された「実績PER」をチェックする必要があります。
もっと言えば、今期予想だけでなく、2年後、3年後の業績予想を見て、現時点での株価が割安か?割高か?をチェックしなければならないのです。
PERの計算例
株式会社A社
- 株価:1,000円
- 1株利益
21.3 100円
22.3 80円
23.3 50円
株式会社B社
- 株価:2,000円
- 1株利益
21.3 50円
22.3 100円
23.3 200円
上記の2社があった場合
2021年3月現在の株価を見ると
- 株式会社A社 PER = 1,000円 / 100円 = 10倍
- 株式会社B社 PER = 2,000円 / 50円 = 40倍
と、株式会社A社の方が相場よりも割安なPERということになります。
しかし、1年後は
- 株式会社A社 PER = 1,000円 / 80円 = 12.5倍
- 株式会社B社 PER = 2,000円 / 100円 = 20倍
2年後は
- 株式会社A社 PER = 1,000円 / 50円 = 20倍
- 株式会社B社 PER = 2,000円 / 200円 = 10倍
と、株式会社B社の方が相場よりも割安なPERに変わっているのです。
あくまでも、業績予想ですので、確実なものではありませんが
1年後、2年後、3年後の業績予想のPERを見た時に「割安なのか?割高なのか?」が重要なのであって、今や過去のPERが重要なわけではないのです。
PERで株を評価し、投資するのであれば、近い将来(1年後~3年後)の業績予想も踏まえて、PERを計算し、そのPERが業界の平均水準に対して、割安なのか?割高なのか?で考える必要があるのです。
もし、利益の成長率が10%の企業があった場合に3年で1.33倍の利益が見込まれます。つまり、相場のPER:15倍から見て、多少、割高であったとしても、将来の成長を見込めれば投資ができるという判断もできるのです。
- 利益成長率:100%の株 → 割安・割高の判断水準は PER:15倍
- 利益成長率:110%の株 → 割安・割高の判断水準は PER:20倍
- 利益成長率:120%の株 → 割安・割高の判断水準は PER:26倍
- 利益成長率:130%の株 → 割安・割高の判断水準は PER:33倍
- 利益成長率:140%の株 → 割安・割高の判断水準は PER:41倍
- 利益成長率:150%の株 → 割安・割高の判断水準は PER:51倍
見込まれる利益の成長率が大きければ、判断基準となるPERの倍率も高くても許容できるようになるのです。
ただし、将来の業績予想は、期間が長くなればなるほど不確実性が高まってくるため、将来の株価や1株利益を約束してくれるものではありません。それも踏まえたうえで、この企業の株が割安か?割高か?判断しなければならないのです。
PERを使った投資戦略は、業績の安定した割安株への投資がメイン
PERの使い方としては、いろいろなものがあり、PERだけで投資判断をするものではありません。
しかし、主にPERを使った投資戦略というのは
- 業績が安定している
- PERが低い
優良株に投資する
というものです。
条件としては
- 毎年、売上・経常利益ともに少しずつでも伸びている銘柄
- PERが10倍未満の低い銘柄
- 業界のPERの平均水準よりも低い銘柄
- 事業内容から、伸びている理由が把握できる銘柄
です。
業績が安定して伸びていて、事業内容も問題ないのに、PERが5倍、7倍という低い水準の株の場合は、将来的に15倍、20倍程度には伸びる可能性が高いのです。5倍の時に株を購入しておけば、20倍の時には資産が4倍に増えていることになります。PERは、あくまでも、相場よりも割安な銘柄を見つけるために利用するものなのです。
まとめ
- PERは、株価の割安・割高の目安になる指標
- PERの平均水準は、15倍前後
- PERは、実績PERではなく、予想PERを見る!
- 2年~3年後のPERで割安・割高を判断しなければならない!
- PERを使った投資戦略は、業績の安定した割安株への投資がメイン
PERという一つの指標だけで、投資する銘柄を決めることはおすすめできませんが、逆に言えば、どんな投資手法であっても、PERは見ておいて損はない「株価が高いか?安いのか?」を推し量る指標でもあるのです。株式投資の初心者こそ、正確に「PER」の内容、使い方を把握しておく必要があります。