- 株価を決めるのは、投資家の心理。投資家の心理を動かすのは材料
- 業績が良くても、株価は下がる
- 業績が悪くても、株価は上がる
- 材料が知れわたったら、株価は下がる
- 株価を予想するためには、投資家の心理を予測する必要がある
株価を決めるのは、投資家の心理。投資家の心理を動かすのは材料
株価の決まる原理原則
株価というのは
- 「株を買いたい」と思った人の買いたい価格
- 「株を売りたい」と思った人の売りたい価格
が合致したときに売買が成立し、その価格が「株価」となります。
株式取引では、証券取引所が買いたい人と売りたい人を仲介して、売買を取り次ぐ仕組みになっています。買いたい人が買いたい価格、買いたい数量を提示し、売りたい人が売りたい価格、売りたい数量を提示し、条件が合致したところで売買が成立する仕組みです。
だからこそ、株価の決定には2つの原則があり
- 価格優先の原則
買い注文は、価格の高い注文が価格の安い注文よりも優先される
売り注文は、価格の安い注文が価格の高い注文よりも優先される - 時間優先の原則
取引所が受け付けた時間の早い注文が優先される
上記の原則に基づいて、買い手の希望価格と売り手の希望価格がマッチしたときに約定(やくじょう)となり、株価が決まるのです。この取引が連続して起こり、何回も約定するため、株価は、常に変動しながら、上下動を繰り返すことになります。
「株価」というのは、一番直近で売買が成立したときの価格のことを言うのです。
業績と株価は連動しない
つまり、経営状況が好調の企業の株は、買いたい人が増えるから、価格が上昇して、経営状況が悪い企業の株は、売りたい人が増えるから、価格が下がるって、ことでしょ?
それが違うのよ。
株式投資の初心者の方は、そう思う人が多いんだけど、「業績と株価は連動しない」ということを覚えておく必要があるわ
なぜ、業績と株価は連動しないの?全然、わからないんだけど・・・。
できるだけ簡単に説明するわ
- 株を買おうとする人は「なぜ、株を買うのか?」というと「株価が上がって儲けられる」と思うから
- 株を売ろうとする人は「なぜ、株を売るのか?」というと「株価が下がって損をする」と思うから
です。
「株価が上がって儲けられる」と思う状況というのは
今は業績は悪いけど、今後業績が上がる要素がある
という状況です。
業績が悪くても、株価は上がる
例えば、製薬会社のエーザイを見てみると
エーザイ(4523)
コロナの影響で、業績は売上-7.1%、営業利益-58.8%、経常利益-59.0%という状況になっていて、決して、良い経営状態とは言えません。
しかし、株価を見てみると
と急激に株価が上昇していることがわかります。
これは
米国のバイオ医薬品大手バイオジェンと共同開発したアルツハイマー病新薬「アデュカヌマブ」が2021年6月7日、米食品医薬品局(FDA)に承認された。
というニュースがあったからです。
アナリストらはアデュカヌマブの年間売上高は2023年までに12億6000万ドルに達すると予想している。
とも言われており、かなりの売上につながる、新薬が承認されたため、「今後、業績が上がり、株価が上昇するだろう」と考える投資家が増えることで、株価が高騰しているのです。
今現在の業績ではなく、数年後、今よりもかなり業績が上がるという「材料」が出たからこそ、株価が上昇しているのです。
株の「材料」とは、業績の上(下)方修正、増配・復配・減配、画期的な新製品の開発など、株価に影響を及ぼす出来事のことを言います。
多くの人が「この株の株価が上がる」と思ったら、株価が上がるのです。
逆のパターンもあります。
業績が良くても、株価が下がるパターンです。
業績が良くても、株価は下がる
日本郵政 (6178)
売上は、-1.9%と減少している、経常利益は+5.8%とコロナ禍においても、安定度は抜群のつぶれない会社日本郵政の株です。
しかし、株価を見てみると
上場後から、株価は下落の一途をたどっています。
これは上場時に多くの個人投資家がIPO株をつかまされ、損をした経験を持ち、かつ、かんぽ生命の不正契約問題の不祥事が多く、たのみの金融事業も民業圧迫の批判も多くなかなか進まないなど、「これ以上株価が上がる材料がない」と投資家から判断されていることが要因です。
コロナ禍でもなくならない生活インフラとして、2021年3月には若干上昇しましたが、なかなか上げきらずに停滞してしまっているのです。
多くの人が「株価が上がる材料がない」と判断すれば、株価は下がり、停滞してしまうのです。
このように株価というものは
業績という確実なもので決まるわけではなく、投資家の心理によって決まります。
- 「株価が上がりそう」と思う人が多ければ → 株価上昇
- 「株価が下がりそう」と思う人が多ければ → 株価下落
となるため、
株価は、企業の業績と連動しない
のです。
これを勘違いして、業績の良い企業の株を買ってしまうと、なぜか、株価は下がってしまい「株式投資で損をする」ということになってしまうのです。
株式投資の初心者にまず覚えておいて欲しいのは
株価を決めるのは投資家の心理であり、投資家の心理を動かすのは「材料」である
ということです。
プラスの材料が大きければ大きいほど、株価は急上昇し
マイナスの材料が大きければ大きいほど、株価は急落する
ということでいいの?
概ね、そういう形で動くことが多いわ。
有望な新商品の開発で株価が上がったエーザイや不祥事により株価が下がった日本郵政などもそのパターンね。
ただ、そうではないケースもあるので、注意が必要よ。
悪材料が出ても、株価が上昇する
悪材料が出たとしても、その悪材料によって、「これ以上株価が下がらない(これからは株価は上昇する一方)」と多くの方が思う状況になると、株価は上昇します。
このことを「あく抜け」と言ったりします。
あく抜けとは
株価を下げるような悪い材料が出た場合、通常は株価が下がりますが、悪い材料が出尽くしたときに下落していた株価が反発すること
日本航空 (9201)
日本航空(JAL)は、2020年2月のコロナの発生から株価が急落しました。観光需要がなくなり、海外旅行に行くこともできなくなるのですから、当然です。「コロナ」というかなりの悪材料ということになります。
しかし、2021年の2月、3月から、徐々に株価が持ち直してきています。
世界的にワクチン接種が進み、ロックダウンから正常化する国も出てきた中で、悪材料が出し尽くした「あく抜け」の状態になりかかっているからです。
変異株などのリスクはありますが、これ以上悪化することはない(株価が下がることはない)と判断する投資家が多く、「ここからは上昇するだろう」と判断しているということです。
材料が知れわたったら、株価は下がる
株の格言の中には「知ったら終い」「噂で買って事実で売る」などがあります。
「知ったら終い(しったらしまい)」とは
材料があっても、実際にその材料を多くの方知ってしまったら、相場はお終いで、情報が織り込み済みになるトレンド相場が終わるということを意味する格言
「噂で買って事実で売る」とは
不確かな状態の材料の時に買って、材料が確実になったときには売る方が良いということを意味する格言
株価は、材料によって決まるのですが、どちらの格言も、多くの投資家に知れ渡る前に買っておかないと、多くの投資家が買い終わったころには、株かも天井になり、株価は下落してしまうということを意味しています。
大塚ホールディングス(4578)
大塚ホールディングスは
- 2016年12月9日 「日経平均構成銘柄に採用されるのではないか?」という不確かなニュースが流れる
- 2017年1月6日 新たな日経平均構成銘柄として大塚ホールディングスの採用が発表される
- 2017年1月24日 日経平均構成銘柄に採用される
一目瞭然ですが、「日経平均構成銘柄に採用されるかも?」という噂の段階で、株価がどんどん値を上げていき、「日経平均構成銘柄に採用される」という確定情報のタイミングがピークになり、あとは実際に採用されるまで、下降トレンドが続いてしまいました。
噂の段階では「そうなったら株価が上がるかもしれない」という思惑を多くの投資家が持つため、株価が上昇し、実際にその情報が投資家に拡散して、発表されて事実になったところがピークとなり、これ以上の株価上昇の期待値はないとして、株価は下落していったのです。
同じ株価を左右する材料であっても、不確かな情報の段階で、多くの投資家は値上がりを期待し、購入するため株価は上がるのです。確実な情報となり、多くの投資家に材料が知れ渡った段階で、今後の株価の上昇は見込めない、ピークであることを多くの投資家が悟り、株価が下落してしまうのです。
株価は、材料の大きさによって、変動しますが
- 材料がどの程度確実なものなのか?
- 材料がどれだけの投資家に知れ渡っているのか?
によっても、株価への影響が異なるものなのです。
株価を予想するためには、投資家の心理を予測する必要がある
前述した通りで「株価を決めるのは材料の大きさ」であり、「材料をもとに投資家がどう判断するのか?」という投資家心理・思惑によって株価が変動するのです。
株式投資で勝ちたいのであれば、この投資家の心理を読み解く、予想する、推測する必要があります。
ただし、難しいのは「投資家」と一言で言っても、株を売買する投資家(市場参加者)は、千差万別であるということです。
個人投資家もいれば、企業もいて、機関投資家、ファンド、銀行、生命保険会社、AIロボットまで幅を利かせています。日本人の個人投資家よりも、外国人の個人投資家の方が多く、売買代金も大きいのです。
多くの投資家(市場参加者)の立場になって、株を多面的に見ることができなければ、株価がどう動くか予想するのは難しいということになります。、
投資家心理を、立場の違う投資家の立場になりながら、予想し、株を売買する必要があるのです。そのためには、様々な方法がありますが、単純に業績だけを見れば良いわけではないことをしっかり理解しておきましょう。経営実績も、材料のひとつにすぎず、それを見た投資家が「どう判断するのか?」が株価の予想には重要だということです。
まとめ
株価はどうやってきまるのか?というと、買いたい人の買いたい価格と売りたい人の売りたい価格が合致したときに決まります。
買いたい人が多ければ、株価は上昇し、売りたい人が多ければ、株価は下降するのです。
多くの初心者投資家が間違えてしまうのは「株価を決めるのは、業績ではない」という点です。株価は「投資家の思惑・投資家心理によって、決まる」というのが覚えておくべき重要なポイントです。投資家は、材料を見ながら、買うか?売るか?決めるため「投資家心理は材料によって決まる」のです。投資家心理を知ることで、株価の変動を予想することができるということになります。
- 株価を決めるのは、投資家の心理。投資家の心理を動かすのは材料
- 業績が良くても、株価は下がる
- 業績が悪くても、株価は上がる
- 材料が知れわたったら、株価は下がる
- 株価を予想するためには、投資家の心理を予測する必要がある